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新学習指導要領と2012年度中学校教科書改訂の概要について

脱「ゆとり」へ

今回の教科書改訂においては、現行の5教科の教科書のページ数(3,106ページ)と比べ、約33%増の4,015ページと大幅に増加しました。なかでも理科は各教科書会社平均で45%、数学は平均33%と大幅な増加となりました。 内容は、従来までの「発展的内容」(教えるか否かが教師の裁量に一任されている)が通常の学習内容の扱いとなり、全体的に難易度が高くなっています。また、いろいろな文章や資料の読み取り、そして発表・説明などを行う「言語活動」やOECD生徒学習調査度(略称PISA)の結果や内容を意識した「PISA型能力(覚えるだけでなく、それらを活用する能力)」を重要視する内容が充実しています。
新しい教科書の大きな特徴としては、1.基礎基本の徹底(小学校や全学年の復習、豊富な練習問題など)、2.言語活動の充実(自分の意見の説明や発表につながる設問、各種の数値データや図や表の読み取り、レポートなどのまとめ方)、3.改正教育基本法の反映(伝統的文化の尊重、公共の精神にちなんだテーマの設問、環境の保全)、が各教科の特性を考慮しながら、盛り込まれていることです。以下に、各教科の主な改訂概要を説明いたします。 また、それに伴う高校入試の変更予想も併記しております。

国  語


【新教科書の変更点】
国語は「言語力」を向上させるために、次の三点が大きく変わります。
 @文章を的確に読み取り、それをまとめ、自分の考えをわかりやすく書く。
   文章の構成を的確に読み取り、まとめる。また、それに対して自分の考えたこと、感想をわかりやすく書く。
 A日常の言語活動に関する単元の増量
   コミュニケーション能力を高める。
 B「文法」「コミュニケーション能力」「伝統文化(古典)」の強化
ことば(漢字を含めた語彙力)の数を増やす。
文法(文章を書く上での決まりごと)を理解して長文を書けるようにする。
具体的には次の四点が新しい教科書で新たに増えます。
 @文法事項の前倒し
  文法を理解し、早期に正確でわかりやすい文章を書けるようにする。
 A効果的な「漢字」の習得
  常用漢字196字増加に伴い、まとまった単元を設定し、ことばの数(語彙数)を増やす。
 B古典というジャンルへの踏み込み
  伝統的な言語文化(文章)を早期に体験し、ことばの使い方、表現の仕方に奥行きを持たせる。
 C実生活に即した「言葉」の理解と使い方
  新聞記事、インターネット、手紙、レポートの書き方などの学習。
国語が強いと他の教科にも良い影響があるため、「漢字」「文法」「言葉」の基礎力を身につけ、「読み取ること」「書くこと」の力を養うのが目標となります。

【高校入試の変更予想】
  @記述式問題の増加
   読解問題では、選択問題や抜き出し問題が減少し、「著者や自分の考えをまとめる」ような生徒の表現力を問う問題の比重が高まり、指定語数が増える。
  A問題の素材
    実生活に即した「言葉」の理解の学習量が増えることにより、新聞記事やインターネット関連の実用的な題材が問題として取り上げられるようになり、今まで以上に幅広い知識が要求される。
(文責・蝦名)

英  語


青森県の英語教科書は、皆さんが使い慣れたNEW CROWNが採用されませんでした。主人公のケンやクミを憶えている保護者の方もおられるのではないでしょうか。全く違う教科書になるため、登場人物は「タク」や「ナナミ」に取って代わられます。けっこうショッキングですよね?
 また、中一は一般動詞から学習がはじまり、Lesson3でようやく(!)be動詞が出てくるのです。

【新教科書の変更点】
英語改訂のポイントは大きく言って二つに集約されます。
@採用語彙の必修100語の制限削除。語彙900語から1200語へと300語の増加
単純に負担増であることと、新中二と新中三は、それぞれ前の学年で「すでに学習した」という前提で作られた教科書を使うため、その差分も学習しなければなりません。例えば、新中学3年生は、新教科書会社の1年生、2年生の教科書を見たこともないのに、それをベースにした3年生の教科書を渡されることになるのです。単語や連語などでのギャップは当然生じます。また、新中学1年生も、小学生での学習で、既に「聞きなれて」、「ある程度話せる」という状態を前提とするため、内容は高度化します。
A「歯止め規定」の削除
関係代名詞、不定詞、動名詞、受動態、関係代名詞whatなどに関する歯止め規定(主に、「基本的なもの」のみを学習する、という規定)が削除され、より高度な文法学習の機会が与えられます。

【高校入試の変更予想】
さらに、学習素材として「日本の伝統や文化に関する教育の充実」や「福祉・環境・平和・人権・情報化・自然災害」などの採用が考えられ、採用単語数の増加ともあいまって、高校入試に於いては、
! 長文化傾向に拍車がかかる
! 英作文の比重がますます高まり、難易度も上がる
ということが考えられます。
新指導要領の解釈が多義的な部分、運用に幅が持たせられる部分も考えると、辞書の活用やフォニックス(アクセントや発音)の復活も十分考えられます。保護者の方からは、「最近の子はなぜ辞書を使わないのですか」「なぜ発音の問題がないのですか」という疑問がよく寄せられていましたが、それは旧指導要領を反映したものだったのです。 全体として「勉強しなければついていけない、学校の授業だけでは足りない」のは間違いありません。

 越えるべきハードルが上がることは、高度な学習を望む生徒にとっては確実にプラスです。また、全体として学力が底上げされることも歓迎すべきでしょう。 (文責・佐藤)

社 会


教科書のページ数で言うと、地理・歴史・公民ともに約20%増えています。 それでは、増えた分はどのような内容になるのでしょうか。
【新教科書の変更点】
地理

地理は「思考力・判断力・表現力」の育成するために、次の2点が変わります。
@ 地図や資料の読み取り、作成方法など充実化
地理資料は、約230点増加します。大幅に増加した資料を読み取り、読み 取った内容を多面的にまとめる力を養います。
A 世界でも日本でもすべての「州」、すべての「地方」を扱う
これまで、世界地理はアメリカ、中国、フランスを中心とした学習で、日本 地理は岩手県、福岡県、東京都を中心とした学習でした。新要領では、中1で は世界地理のすべての「州」、中2では日本地理のすべての「地方」を学習します。


「小学生」から知識の積み上げが重要

  世界地理、日本地理ともに、小学校の知識が出発点となっています。小学5年 生で学習する世界地理の内容や小学校での47都道府県の学習が、中学の世界地 理、日本地理の知識の基礎となります。そして、中学の世界地理、日本地理の学 習量の増量分を通して、「世界の中の日本」について理解を深めていきます。

小中高ともに一貫して重要視されているテーマは、次の3点です。
@ グローバル化→世界の中の日本の役割
現在、日本の生活は、世界各地との結びつきを基盤として維持されているた め、世界の現実を理解し、世界の中での日本の役割を理解することが重要です。
A 国際的な相互理解
グローバル化が進展している現在、世界の諸地域について学び、そして世界 の人々との相互理解を深めることが重要です。
B 環境問題
世界の諸地域や、日本の各地域を学ぶことを通して、深刻化していく環境問 題や環境保全を中心とした考察することも重要です。


歴史


@ 近現代史の充実
大正時代以降は25%の増加になっており、特に戦後の内容が増加しています。
A 世界史の充実
「四大文明」や「三大宗教」、「中世ヨーロッパ」が復活してきます。例えば、 「四大文明」は今の教科書でも扱われていますが、定期テストなどに出る重要 語句はエジプト文明のピラミッド、ナイル川、中国文明の甲骨文字くらいで した。しかし、新しい教科書では、今の教科書では出てきていない中国の 周が重要語句として登場するなど、覚えるところが多くなっています。
B中3の1学期まで歴史を学習
  今までは2年生までに歴史と地理を並行して学習し、3年生からは公民を学 習してきました。しかし、来年度から3年生の1学期まで歴史を学習すること になります。


公民

@教科書の1章が変更
  今までの教科書の第1章は、高度経済成長がメインの現代史的な内容でした。   しかし、歴史で現代史が増えたため、逆に公民では現代社会の内容が少なくな っています。その代わりに、「対立と合意」「効率と公正」といった今までな かった内容が入っています。
Aニュースで聞く用語が増加
 「裁判員制度」「円高」「非正規雇用」など、日ごろニュースで聞く用語が取り 上げられています。


◎授業内容の変化
 地理・歴史・公民ともにいえるのは、思考力を問う内容になっていることです。歴史で は、時代の流れを把握させるようになっていたり、地理や公民では、資料やグラフ が増え、そこからどのような特徴がみえるのかを考えさせます。特に公民では、ニュースで聞く用語を増やすことにより、社会との関わりや政治参加など多様な問題について考えさせていきます。つまり、ただ単語を暗記すれば点数が取れる内容から、一歩進んで、その知識をいかに活用するかに変わっています。

【高校入試の変更予想】
@「活用型」の増加
近年増えている資料の読み取りや、説明を求める出題が引き続き行われる可能 性が大きいと考えられます。特に青森県の高校入試の社会科では20点近くが 記述問題となっています。教科書で扱われる用語、内容が厚くなっていますが、 正確な用語の習得、内容理解が重要となります
A 出題範囲の拡大
  知識事項では、地理、歴史ともに大幅に増加し、新聞や時事問題等で見られる 用語の活用も行われる可能性が増えてくることが予想されます。
B 地歴公の分野融合型の出題が増加
  昨年の高校入試では、近年ではあまり出題されることのなかった融合問題が大問として17点分出題されました。教科書の改訂により、知識を「言葉」として覚えるのではなく、他分野との関連性も考えて学習する必要が増加したため、 今後もこの傾向が続くと思われます。できるだけ不得意分野を作らず、地理、歴史、公民ともに、バランスよく総合的に学習することが必要となってきます。
(文責・猪股)

数 学


【新教科書の変更点】
@ 新単元と増加項目
年間の授業数が増え,教科書のページ数が増えました。中学1年では205ページ から261ページ,中学2年では197ページから211ページ,中学3年では207ペー ジから254ページへと増えています。
「新しいことをたくさん覚えなければならない」というよりは,「今まで削除されていた必要なものが,補足・補助的に増えた」という方が正確かもしれません。結果的には,新単元のみならず,今ある単元の基本例題も増加し,覚えなければならない問題のバリエーションが増加します。早い学年(小学生,中1など)で、基本的計算や公式などの知識を身につけ,上の学年ではその知識を活かした「活用力」を身につけなければならなくなります。また,高校の範囲だった計算を中学校の教科書で習うものもあります。


A 小学校から高校までの一貫性
小学校から中学校,そして高校数学へ繋がるカリキュラムで行われます。 小学校では「早く正確な計算力」,中学ではそれを「知識・技能」「考え方や表現」として応用していきます。小学校の内容が不十分だと,今以上に中学校で苦戦し,そして高校にまで影響を受ける可能性が大きくなると思われます。数学は特に,一度遅れると取り返すのが難しい教科となるので,8割理解のまま次の単元に移ってしまうと,ごまかしが効かないため,模試や入試ではより点数を取りにくくなるでしょう。

B 「覚える」から「理解」へ
ただ問題を解けるか解けないかより,問題を理解しているか,していないかが重要視されています。「計算の仕方を覚える」ではなく「計算の仕組みを理解する」ことです。なぜこのように解いたのか,式の意味や問題の意味を説明できるまでの理解が必須となります。 これからは基礎的な知識や技能を「どう使うか」が問われるようになるでしょう。基礎的な知識(計算の仕組み)や技能(計算力)の早期習得は必須です。


【高校入試の変更予想】  入試では,「解き方を自分で発見する」ことが鍵となると思われます。「これまでに習った問題」を「見たことのない問題」と錯覚させるようにわかりにくく問いかけてくるでしょう。そして早くも昨年,各都道府県で出題されたように、標本調査や資料の整理の問題など,身近なものを活用するような問題も増えると思います。早期からの、よりたくさんの類題演習が高得点のポイントとなるでしょう。 (文責・佐々木)

理  科


【新教科書の変更点】
青森市採択の学校図書では、今までは1分野・2分野の上巻・下巻の合計は552ぺ−ジだったのが、新教科書では1,2,3年生用に3冊になり、その合計は792ぺ−ジ、実に143.5%となりました。

 新しい単元として、「水圧と浮力」・「種子を作らない植物」・「電力量」・「イオン」などが新教科書では復活してきました。しかし、それだけで143.5%となったのでしょうか。新教科書の内容をみると、メンデエレフの周期率表、シダ・コケ植物の一生、ボルタ電池を例にした化学電池や燃料電池、力の合力と分力など復活してきたものは、以前より難しくなっているものもあります。

 次に、実験・観察のペ−ジの増加が目立ちます。これは、実験・観察がただ増えただけでなく、実験・観察の内容がかなり詳しく述べられています。これまでは、結論やまとめが見あたらなかったのが、結論やまとめを明確にしています。それに、小学校や旧学年で習ったことが繰り返し出てきます。新しい内容だけでなく、今までに習ったこととあわせた問題として扱われています。

 また、数学的要素が含まれた問題は、数学的知識の練習も載っていました。さらに、新しい教科書では、今までの発展項目のうち、7割程度が正規内容になりましたが、見た限りでは、今まで以上に発展項目が載っていました。

 新教科書では幅広い知識と数学的思考が必要となるでしょう。

【高校入試の変更予想】
青森県の高校入試は、幅広い範囲からまんべんなく出題されてきました。この傾向は続くと思いますが、問題パターンが、結果だけを求めるものから、自分の考えを表現するような問題へと変わると思われます。また、実験結果から仮説を立てて結論を導くことも必要だと思います。  「イオン」や「力と圧力」などの計算が必要なものの必出となるでしょう。 (文責・佐藤)